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事業検証 中心市街地活性化 富山市にみるコンパクトシティの問題点

地域活性化・まちづくりのコンサルタント 水津陽子平成18(2006年)中心市街地活性化法改正の翌年、平成19年、青森市とともに、国の中心市街地活性化基本計画第一号に認定され、日本のコンパクトシティ政策の先駆として注目された富山市。先日出された富山市の「中心市街地基本計画(第一期)の事業評価(中間報告)」は、厳しい結果となりました。

 

2008年1月富山市取材レポートから、二年後(2009年12月)、三年後(2011年10月)の富山市の変化を取材。富山市の取組みを通して、コンパクトシティ政策の問題点、中心市街地活性化の課題と今後を考えます。

 

富山市の中心市街地活性化、コンパクトシティ政策の目的と目標達成度

富山市の中心市街地活性化基本計画については、2008年にレポートしましたが、以下、三つの政策を推進するものです。平成23年8月に出された基本計画第一期の事後評価(中間報告)では、目標達成は非常に厳しい状況です。

 

推進政策 事業概要・目標 H23目標 22年度
公共交通の利便性の向上 ライトレール導入。路面電車環状線化。一日乗車数1.3倍へ。
13,000人
11,002人
まちなか居住の促進 5地区を整備し、居住人口を1.1倍へ。
26,500人
23,648人
賑わい拠点の創出 キーテナント(百貨店)移転、広場整備、通行量を1.3倍へ。
32,000人
20,155人

 

富山駅前富山市がコンパクトシティを目指す理由は、モータリゼーションの進展による市街地の郊外化や人口減少・少子高齢化等があります。一方、平成26年末には、北陸新幹線が開通予定。富山-東京間は1時間短縮で、最短2時間10分で結ばれます。(東京-金沢間は2時間28分)富山市にとっては交流人口拡大の大きなチャンスです。

 

検証1 公共交通の利便性の向上

富山市内の交通網としては、JRのほか、富山地方鉄道富山ライトレール、バス路線が走っています。富山地方鉄道は、市の中心部を走る環状線などの市内電車(路面電車)、立山や宇奈月温泉につながる鉄道路線、バス路線があります。ライトレールは駅の北側を走っています。現在、北陸新幹線富山駅開通に向けて、駅の工事も進んでいます。

 

富山駅前路面電車富山路面電車

写真は富山駅南側です。左手がJR駅舎、右手に地鉄の駅があり、駅前には「路面電車」の乗り場があります。路面電車は、駅から市の中心部(中心市街地含む)を回っています。運賃は大人200円均一。ICカードえこまいかを使うと170円になるようですが、観光客向けの「一日乗車券」などはないようです。

 

富山駅北口駅通路ライトレール

ライトレールは、中心市街地活性化基本計画に基づいて整備された新交通システムです。乗り場は、地下通路で駅の北側に移動する必要があります。富山市は、駅をはさんだ南北の行き来が鉄道、道路とも不自由です。市内の観光客数が少ないせいか、南北をつなぐ通路の入り口もわかりにくく、地下通路は長く、暗く汚い印象がありますが、これらも新幹線開通時に向け改善される予定です。

 

富山マリーナ富山灯台岩瀬まち歩き

現在、ライトレールは駅の北側を走り、南の路面電車との乗り換えは不便です。ただ、北側にある「岩瀬まち歩き散策路」富山港展望台や北前船海鮮問屋、岩瀬運河などの観光資源へのアクセスの利便性は向上しています。車社会で、一人一台、車を所有する地方都市で、どこまで公共交通の利用が進むかは疑問ですが、高齢化が進み、エネルギー問題などもある中、公共交通のインフラ整備は、長期的な視点で評価されるべきです。

 

街中感謝デー自転車自転車

富山の人が中心市街地でなく、郊外の大型ショッピングセンターに買い物に行く理由の一つが、富山市内の駐車場代の高さにあるといわれています。「街なか感謝デー」などをもうけ、駐車場の補助があると、その時は利用がありますが、恒常的な解決にはつながるものでありません。2010年なかったものとしては、こちらのシクロシティ。富山市中心部15か所に150台整備されているようですが、利用するのにまずシステムを理解する手間、登録する手間などを考えると、どれだけ利用があるのか、若干疑問を感じます。路面電車もありますし、何より富山市内をこれで回る観光のイメージがいま一つ湧きません。

 

検証2 まちなか居住の促進

富山市中心市街地まちなか居住中心市街地まちなか居住

まちなか居住については、2008年のレポートにも書きましたが、持ち家率が高く、郊外に一軒家を立てるのと変わらない、中心市街地のマンションへどれだけ需要があるか。富山市は中間報告で、平成17(2005)年10月以降、転入が転出を上回っているといっていますが、中心市街地の居住人口の減少率は一定の割合で落ちています。

 

中心市街地富山市中心市街地メインストリート中心市街地歩行者数・交通量

少なくとも、2008年1月から2011年10月まで、富山市の中心市街地を見て、まちは整備されているにもかかわらず、魅力的になった点よりは、寂れの方を大きく感じます。写真は2011年10月の平日昼間の富山市のメインストリートの姿です。率直に言って、このまちに住みたいと思わせるものが何か、その魅力がわかりにくいです。

 

中心市街地お城富山DAIWAデパート中心市街地のデパート

近くには、模擬天守ではありますが一応「富山城」や北陸で展開する百貨店「大和」もあります。大和は平成19年に再開発ビルのテナントとして売り場面積を拡大したものですが、それがまちなか居住の吸引力にはなり得ていません。むしろ、大和の裏手の商店街は、この三年間で、シャッターが下りた店舗が増えたように見えます。もちろん、この間、リーマンショックなどもありましたが、他の中心市街地と比較し、それは問題の本質ではないと感じています。

 

中心市街地バス停誰のための中心市街地中心市街地サイン駅前バス停

中心市街地で整備されるものといえば、バス停やまちの案内看板だったり、こうしたオブジェです。しかし、これは誰のための何のためのものなのか、まちづくりの中で見えない面があります。富山のガラス工芸をのまちなかアートとして展示したものの、まちに溶け込まず、浮いてしまっていて、もったいない気がします。市役所前の新しいバス停と富山の玄関である駅前の古びたバス停の落差もいろいろと考えてしまいます。

 

富山市岩瀬・富山のまちづくり富山中心市街地の在り方

実際に、何回か富山を歩いた中で、富山市に住むとしたら、どのエリアが魅力的かを考えると、たとえば、自然豊かで閑静な住宅地、古い街並みが残る運河のまち「岩瀬地区」などは、非常に魅力を感じます。これまでは北の端の不便な地域だったかもしれませんが、ライトレールの駅ができて、富山駅や中心部へのアクセスもよくなりました。いろいろなニーズもあるとは思いますが、住むのなら、むしろ、こうしたまちに住みたいと思います。

 

交通網を整備したなら、その沿線を開発するのが常道です。道は動線、そこに機能集積し、駅ごとに魅力的なまちづくりがされ、隣接する地域が個性をもつことで、沿線の価値がさらにあがる。そこに人が集まってきて、エリア的に魅力的な地域が形成されていく。そうした、まちづくりの設計図、骨格のようなものがどこにあるのか。それが見えないと、まちづくりとしては非常に厳しいと感じます。

 

検証3 賑わい拠点の創出

2008年のレポートでも指摘したとおり、富山市の中心市街地の賑わい拠点の創出で核となるこの広場は、冬になると鉛色の空に覆われる、日本海側のまちを一層暗く、寒く感じさせます。このガラスをつかった建築がここ数年、京都や金沢でも見られますが、日本を代表する都市がこんなことでいいのかと感じます。それでも京都や金沢など、観光客でにぎわうまちでは、まだその寂しさもそれほど強く感じなくてよいのですが、富山はこれで良いのかと行くたび思います。

 

中心市街地にぎわい創出スケート中心市街地の賑わい拠点賑わい創出拠点遊び場?

写真は、左2つが2010年、右二つが2011年のものです。2008年にはただ寒い空間が広がっているだけでしたが、2010年には簡易のスケート場が設置されていました。2011年は、青い囲いの中に小さな遊び場スペースがありましたが、ひと組の親子がいただけでした。10月とはいえ、肌寒く、こんな吹きさらしの中で、人がここにいる理由がどうしても見出せません。賑わっているのはスターバックスだけ。横浜の赤レンガなどは、魅力的な空間演出で、それだけで人が呼べる施設となっていますが、ここは富山を象徴する魅力的な場所にはなり得ていません。

 

衰退する中心市街地放置自転車富山中心市街地

にぎわい拠点のすぐ裏手の商店街の衰退は激しく、大型商業施設が撤退したあたりの通路は無造作に自転車が置かれ、周辺の商店街にはかなりシャッターの閉まった店舗が見られます。新たな再開発計画もあるようですが、富山市の中心市街地が目指している将来像、まちのコンセプトが少し見えにくいです。

 

商店街チャレンジショップ商店街活性化

中心市街地における、商店街活性化、賑わい創出の唯一の薬は「魅力的な店舗」或いは「魅力的なソフト」の誘致以外はありません。商店街活性化における「チャレンジショップ」は、費用対効果からみて、非常に厳しいものを感じます。「チャレンジショップ」をチャレンジショップといってしまった段階でどうなのかという事業の在り方そのものにももっと懐疑的であるべきですし、こうした空き店舗対策事業の見直しも必要な時期に来ているように感じます。

 

中心市街地活性化のあるべき姿とは

富山市の中心市街地活性化の推進体制は、富山市と第三セクターのTMO「株式会社まちづくりとやま」が中心になっています。TMOは富山商工会議所などが中心となって設立されたものです。TMOの事業内容や収支をみると様々な取り組みがなされいますが、事業収入6億のうち、2億は補助金であり、事業支出の最大科目は駐車場借り上げ等の2億4千万円となっています。

 

富山市の人口は417千人、一般会計の財政規模は1696億円(予算額)。歳入における市税割合は40%。比較対象として、金沢市は人口462千人、一般会計1600億円、市税割合は46.9%。域内総生産は県民経済生産の比較になりますが、富山県は石川県に劣るものの、県民一人あたりの所得では富山県は石川県を上回っています。富山市は北陸最大の工業都市。製造品出荷額が経済をけん引しています。一方、金沢市は卸・小売業販売額で全国トップクラスにあります。

 

当然ですが、中心市街地活性化は、地域の特性に合わせた戦略が必要です。改正中活法以降、中心市街地活性化はコンパクトシティ一辺倒になったといっても過言ではありませんが、現在のコンパクトシティ政策で中心市街地が活性化するのは幻想に近いものがあります。富山における中心市街地活性化には、どういうファクター、どういうプレイヤーが必要なのか。そして、何より、どういうvalueを提供するのか。それをもう一度分析再考する必要があるのではないでしょうか。

 

soon

比較レポート~北陸三県「石川・富山・福井」の中心市街地、観光まちづくり比較

 

 

※地域活性化・まちづくりに関するコンサルティング、企画コーディネート、講演執筆のご依頼・お問い合せは、お気軽に。「お問合わせフォーム」、またはお電話にてご連絡ください。

 

まちづくりの教科書 中心市街地・商店街活性化編

2009~2011年、全国60箇所の地域を歩き、地域活性化・まちづくりの取り組みを取材。「まちづくりの教科書~中心市街地活性化、商店街活性化編(冊子)」にまとめました。まちづくり講座の受講者、地方自治体や商工会議所・商工会等の地域経済団体で、まちづくりに取り組まれている職員や経営指導員の方に差し上げています。

 

まちづくりの教科書 No.1中心市街地・商店街活性化編

A4版16ページ(2011年12月編集発行)

 

目次

1.改正中活法から5年、中心市街地活性化、コンパクトシティ政策の検証

(1)事業検証~富山市にみる「コンパクトシティ政策」の問題点

(2)事業検証~青森市の「コンパクトシティ政策」と観光まちづくり課題 

(3)比較検証~九州・沖縄8つの県庁所在地「中心市街地」の活気活力 

2.活性化の条件、活気活力のある中心市街地・商店街は何が違うのか

3.観光まちづくりによる、中心市街地、商店街のにぎわい創出

 

※まちづくりの教科書は、No.1中心市街地・商店街活性化編のほか、No.2観光まちづくり編、No.3地域ブランド・シティセールス編があります。発送・申込は2012年1月から受付を開始します。

 

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