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青森市は豪雪都市。除排雪経費は自治体財政を圧迫。平成16年には31億円(市の年間予算の3%)になりました。背景には、既成市街地から郊外への人口流失があります。郊外化は、上下水道などの都市運営経費も膨張させます。コンパクトシティは、空洞化する中心市街地に都市機能を集中させることで、コストの縮減と中心市街地活性化を目指すものです。
基本計画に掲げた都市像は、歩いて暮らせる、質の高い生活空間「ウォーカブルタウン(遊歩街)」ですが・・・。(取材レポートはこちら)
平成23年4月、5年2ヶ月の事業検証報告の結果は厳しいものでした。基本計画では、平成13(2001)年、駅前の再開発事業で整備された複合施設「アウガ」(地下1階市場、1-4階商業施設、5-9階図書館などの公の施設)は年間600万人を集客、これを核にし活性化の絵を描きました。
しかし、アウガの売上は予測を大幅に下回り、ピークは2006年(28億5000万円)。以降、減少の一途をたどり、青森市(筆頭株主)は、2008年金融機関に8億円債権放棄を要請。2011年、空き区画7つの解消、地代賃借料の引下げ要請などによる再建計画が出されましたが、店舗誘致など前途は多難です。
平成22年12月、東北新幹線全線開通。「新青森駅」開業にあわせ、ウオーターフロントに、新たに複合施設「A-FACTORY」、ねぶたを年間通し体験できる「ねぶたの家ワ・ラッセ」を整備。ウォーターフロントの既存施設「八甲田丸」「青森県観光物産館アスパム」と「ワラッセ」3館共通の「青森ベイエリア周遊券」を発売。2011年7月3館の入場者数は17万2千人(開通前は7万人)となりました。
新幹線開通後、ウオーターフロントに賑わいを感じるかというアンケートに「感じる」は33%でした。開業前(9%)よりアップはしていますが、決して高い数字ではありません。観光施設の入込客数を事業評価の指標としている点も適切か。評価指標は、中心市街地活性化のあり方そのものであり、その視座そのものが、この事業の最大の課題ではないかという疑義も持ちます。
| 目標 | 指標 | 基準H17 | 目標H23 | 最新値 |
| 賑わい、街の楽しみづくり |
歩行者通行量(人/日) | 59,090 |
76,000 |
48,010 |
| 観光客集客、交流の街づくり | 中心市街地年間観光施設入込客数(人) | 696,312 |
1,305,000 |
690,942 |
| 歩いて暮らしやすい |
指標:中心市街地夜間人口(人) | 3,346 |
3,868 |
3,547 |
| 中心市街地の商業活性化 | 空き地・空き店舗率(%) | 10.7 |
8.8 |
16.4 |
| 中心市街地小売業年間商品販売額(百万円) | 68,553 |
68,553 |
59,318 |
※青森市の人口は31万人。青森市全体の商業年間商品販売額は、1,052,868百万円。納税義務者121千人のうち、第三次産業従事者は118千人。中心市街地の空き店舗は84店(全511店)。青森市の観光入込客数は年間608万人(うち県内344万人)。そのうち「ねぶた祭(6日間)」で延べ約300万人を数えます。青森へ航空便を利用者している人は年間約50万人(東京、大阪/関西、名古屋、札幌)です。
青森市が目指す「ウォーカブルタウン」、質の高い生活空間とはどういうものなのか。質が高いとは、何のどんな質を指しているのか。青森市は中心市街地を「ウオーターフロント」「ショッピング・カルチャー」「官公庁」「ライフ」の4つにゾーニングし、7つの核の市街地整備を行っています。しかし、まちを歩いて感じるのは、このまちに住みたいと思う理由が見つからない、このまちの魅力が何か、まちづくりのコンセプトが見えないことです。
写真は、JR青森駅。2010年2月、駅前には「観光案内所」が新設され、駅前再開発が行われていましたが、青森の玄関口の第一印象は「なんか灰色」でした。気候もあると思いますが、青森は非常に緑の少ないまちです。駅近くには、歩いていける範囲に、複合施設の「アウガ」、のっけ丼の「青森魚采市場」があります。徒歩圏内の3つの核を、誰がどう歩くのか。観光客向けには、2010年時点では、動線やガイドも十分に整備されていませんでした。新幹線開通で、どこまで整備されたでしょう。
駅から伸びる通りは「しんまち商店街」、近くに青森県庁もあります。まちなか居住を進めるため、クリニックやケアハウスを併設したシニア対応型分譲マンショ ンも建設されましたが、民間のマンション建設は進んでいません。商店街の衰退は激しく、まちを歩く人の姿はほとんど見られません。
しんまち商店街は駅前から柳町通りまで約1キロに渡って続いています。最盛期はどれだけ賑わいがあったのだろうと思います。青森市は、昭和45(1970)年から平成12(2000)年の30 年間で、中心市街地を含む既成市街地から約1万3千人の人口が流出、郊外部全体で約7万人が増加しました。時代は車社会へ。市場や病院、図書館などの公の施設の郊外への移転、大型ショッピングセンター開業で、中心市街地の空洞化が加速しました。
青森市は、高齢者が長時間買い物しやすいまち、安らぎ空間の形成を目指した整備事業や商業振興策、巡回バスなどの施策を打ち出していますが、郊外のショッピングセンターに対抗するこのまちの魅力に関して、明確なコンセプトを打ち出せていません。ここをどんなウォーカプルタウン(遊歩街)にして、誰にどんな楽しみを提供すれば、ここに人を呼び戻し、賑わいを創出できるのか。
平成16年のアンケートで、中心市街地に満足しているという回答は23%に留まり、活性化で重視する事は何かとの問いには、アーケードや融雪歩道を増やす(90.4%)、誇りや愛着のもてる街にする(84.5%)、おしゃれな店舗、明るくきれいな街にする(82.7%)、循環バスなど公共交通の充実(74.2%)が挙げられました。
基本計画は、これらの意見を踏まえて作成されたものだと思いますが、青森市のアプローチをみると、もっとも大切なことが忘れらているのではないかという思いにかられます。まちづくりの原点は、アンケートにもある、このまちへの「誇りや愛着」です。それが失われたまちづくりには真、アイデンティティがありません。活力のあるまちは、愛と誇りに満ち、それが地域の魅力となっています。
まちは人と共に生きていて、まちは思いを語りかける。それがまちの魅力であり、まちづくりの原点である。東北の震災の後、改めてそう感じます。
青森のまちを歩いてもう一つ感じるのが、このまちが誰に何を提供したいと思っているかが、よく見えないことです。アウガでは若者をターゲットにし、一方では高齢者が長時間買い物しやすいまちづくりを目指す、という政策上の矛盾もみられます。新幹線開通を観光の起爆剤として期待し、新たな観光施設がウォーターフロントに整備されましたが、必ずしも「ウォーターフロント」とはどんな場所か、コンセプトも、まちとしての楽しみ方も明確にはなっていません。また、そういう意味では、駅前の商業エリアとの役割分担も曖昧です。
新幹線「新青森駅」開業へ向け、ウォーターフロントには新たな観光施設、青森県産のりんごのシードル工房「A-factory」と「ねぶたの家ワラッセ」が整備されました。しかし、ウォーターフロントの既存施設、「青森県観光物産館アスパム」と「青函連絡船メモリアルshop八甲田丸」の有料入館者数は、各年5万人と低迷しています。アスパムは、総利用者数では116万人あるものの、貸会議室やイベントホールの事業収入が半数を占め、観光施設の地場セレクト(売店)の事業収入は4千万円、展望台事業は2千万円に留まり、お金を落とす魅力的な観光施設とはなり得ていませんでした。
新たな観光施設は観光客にとっては魅力的ですが、既存の施設が持てる力を十分に発揮できていない点について、今現在どれだけ見直しがされているでしょうか。アスパムについては相当の改革が必要だと感じました。一つは、展望台の魅力、楽しみ方を十分提案できていない点、非常に魅力的な資源なだけに大変残念です。展望台を作るだけで、楽しみ方、ソフトの提供は十分とはいえませんでした。(ウオーターフロントに関しては、「青森市民100人委員会」が立ち上がり、活性化ビジョンが検討されているようです)
青森の魅力は、取材レポートにも書きましたが、この青と白の魅力に尽きます。展望台から見える景色も、雪のまちもそうです。展望台からは、左岸に青函連絡船、対岸に北海道を、そして、180度に広がった海と空を臨み、望遠鏡では、海に立つ蜃気楼を見ることができます。地元では迷惑なものでしかない雪も、観光客には実に魅力です。豪雪を見てはしゃぎ、つららに触れて子どもみたいに歓喜し、商店街に並んだすごい数の長靴に興奮します。
雪の中を歩くだけで楽しく、誰も歩いていない雪の上に足跡をつけ、雪を手にとって冷たさを味わってみます。通りにできた雪の山に登りたい衝動を覚え、雪かきのスコップを見ると、無性に雪かきがしたくなりますし、雪だるまやかまくらを作ったらどんなに楽しいだろうと思います。せっかくこれだけ雪があるのだから、観光客はそれをもっと愉しめたらいいのにと思います。でも、ここで最もやってみたいことはできないのです。
観光客として楽しかったのは、小さな市場で実験されていた「のっけ丼」。100円でご飯を買い、市場内の店舗で自分の好きな魚を買い、ご飯にのせていくものです。市場は狭く、観光施設としては、快適さも、キャパシティも十分ではありませんが、市場の人とのふれあいもあり、満足度の高いソフトでした。
青森では、これぞ青森という食を手頃な値段で楽しめる場が少なく、商工会議所が「寿司自慢のまち」として、市内すし店の3000円と5000円の食めぐりクーポンを提供していますが、各店の魅力や評価もわかりにくく、お試しで利用するには高い価格設定になっています。
まちの楽しみ、賑わいは、やはり食によるところが大きく、高知のひろめ市場のように、平日地元の客も利用し、年間300万人を集める成功例もあります。青森には、八戸の「みろく横丁」のような屋台村の取り組みもあり、魅力的な食のソフト、場づくりが期待されます。
※地域活性化・まちづくりに関するコンサルティング、企画コーディネート、講演執筆のご依頼・お問い合せは、お気軽に。「お問合わせフォーム」、またはお電話にてご連絡ください。
2009~2011年、全国60箇所の地域を歩き、地域活性化・まちづくりの取り組みを取材。「まちづくりの教科書~中心市街地活性化、商店街活性化編(冊子)」にまとめました。まちづくり講座の受講者、地方自治体や商工会議所・商工会等の地域経済団体で、まちづくりに取り組まれている職員や経営指導員の方に差し上げています。
まちづくりの教科書 No.1中心市街地・商店街活性化編
A4版16ページ(2011年12月編集発行)
目次
1.改正中活法から5年、中心市街地活性化、コンパクトシティ政策の検証
(1)事業検証~富山市にみる「コンパクトシティ政策」の問題点
(2)事業検証~青森市の「コンパクトシティ政策」と観光まちづくり課題
(3)比較検証~九州・沖縄8つの県庁所在地「中心市街地」の活気活力
2.活性化の条件、活気活力のある中心市街地・商店街は何が違うのか
3.観光まちづくりによる、中心市街地、商店街のにぎわい創出
※まちづくりの教科書は、No.1中心市街地・商店街活性化編のほか、No.2観光まちづくり編、No.3地域ブランド・シティセールス編があります。発送・申込は2012年1月から受付を開始します。
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