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中心市街地活性化~富山にみるコンパクトシティの課題

地域再生コンサルタント 水津陽子2008.1.31 水津陽子

 

中心市街地活性化法(以下、中活法)ほか、まちづくり三法支援の中心は、都市機能の集約や街なか居住の推進など、いわゆる「コンパクトシティ」に重心を置いたもの。都市機能を中心市街地に集約化する中で、人口減少や少子高齢社会に対応していこうとするものです。

 

2008年1月、認定第一号、コンパクトシティ先駆例として、青森市と並び、注目される富山市中心市街地を歩きました。

 
事業検証~ 富山市の中心市街地活性化事業、コンパクトシティ政策の問題点(2011) New


富山市の「中心市街地活性化基本計画」の概要

富山市

富山市の中心市街地活性化区域は、大雑把にいえば、富山駅の南側に広がる東西2キロ、南北2.5キロのエリアになります。左の写真でいえば、幹線道路の下側に進むと、富山駅や県庁、市役所などがあります。写真の右上の高い建物が、ANAクラウンホテル、その手前に富山城址公園があります。

 

いわゆる中心市街地は、その左側のエリアにあたります。まちなか居住や賑わい拠点などの整備事業は、このエリアに集中しています。計画の中核エリアは、約1キロ四方といったところです。

 

富山市の中心市街地活性化基本計画の柱は、以下の三つ。

 

(1)公共交通の利便性の向上

目玉は「ライトレール」の導入による、路面電車の環状線化。目標は、5年間で乗車数を1.3倍(+3千人)へ。

 

(2)まちなか居住の推進
5つの地区整備により、人口増加へつなげる。目標は、5年間で、居住人口を1.1倍へ(+2500人)へ。

 

(3)賑わい拠点の創出

キーテナント「百貨店」の移転、広場整備(写真)等。目標は、歩行者通行量を5年間で、1.3倍(+7000人)へ。

 

※上記数値目標は平成23年度までの五年間、最終目標は26年度。

※平成23年8月の事業評価(中間報告)は、目標実現には厳しい数字が並んでいます。



富山市がコンパクトシティを目指す理由

富山市中心市街地富山市がコンパクトシティを目指す理由は、モータリゼーションの進展による市街地の郊外化や人口減少・少子高齢化。青森市同様、郊外化による除雪費用を含めた行政コスト増大などがあります。平成42年には、三人に一人が高齢者となり、車を運転できない市民の数が二割増加すると予測されています。中心部に機能を集め、そこへのアクセスを高めていくのが目的です。

 

富山市の場合、これに加え、平成26年度、北陸新幹線の開通が予定されています。一方で、富山市は高い共働き率で、勤労者世帯実収入や消費支出か全国一です。富山市は、先般の合併で、富山県の38%の人口を占め、平成18年、43年ぶりに人口が増加に転じています。

 

富山市は、中心市街地活性化基本計画の完成を、この新幹線開通に合せています。新幹線が開通すれば、富山市は首都圏から2時間のアクセスポイントとなります。新幹線の駅は、現在の富山駅に直結。新幹線を降りたら、当該中心市街地エリアへ。富山駅は、富山県都への交通結節点となっています

 

富山市長富山市においては、本事業において首長のリーダーシップが発揮されました。森市長は、この事業がこうしたスピートで実現できた背景には、富山市がいち早く行った大胆な財政改革があると言います。多くの自治体で、LRTの導入を検討しながら、なかなか実現に至らない中、計画から三年で実現しました。

 

 

公共交通の利便性の向上と核施設

富山市路面電車富山市街地には、路面電車、コミュニティバスが走っています。しかし、今現在、路面電車は、今回、再開発がかかる中心市街地エリアを走っていません。今回の計画では、この核となるエリアに、富山市が新たな線路を敷設し、市内電車の環状線化し、利便性を増し、歩いて暮らせるまちを実現しようとしています。この部分は来年度中には完成する予定です。

 

富山駅北側では、すでに富山ライトレールが稼働し、予想を上回る乗車数を実現しています。これは、LRT(次世代型路面電車システム)導入において、JR時代と比べ大幅に増やしたことにあります。本数は、JR時代、1時間に1本でしたが、ライトレールでは、平日昼間15分おきに通るようにしました。今後は、富山駅周辺を高架化し、駅の南北を循環するライトレールが走る予定になっています。

富山市中心市街地ふたつの核施設がすでに完成

すでに整備が終わった再開発事業としては、キーテナントの大和百貨店の移転と、グランドプラザ整備事業があります。今回、取材が、平日の9時から10時ということもあり、両施設はまだオープンしておらず、外観のみの取材です。

 

新しくなって、百貨店自体の来客数は増えているとそうです。(但し、どこまで購買につながっているかは今回取材確認する時間がありませんでした。キーテナントのターゲットは、地元の人にお聞きすると、中高年ということで、若者向けのものは駅周辺の大型商業施設に集まっているということです。

 

富山市中心市街地賑わい拠点として整備された広場です。時間的な問題もあると思いますが、閑散としています。全天候型ガラス屋根でありながら、緑などが少なく、少し無機質な印象も受けます。人が集まったら、賑やかになる?ここをどういう空間にしたいのか。季節、時間帯で、どういう人が、どんな過ごし方ができるのか。日本海側独特の冬の灰色の空。それを、空間演出の中で、地域でどう議論され、こうなったのか。やや疑問が残ります。

富山市中心市街地富山市のミニ・チャレンジショップ事業の成功はよく知られています。これまで、この制度を活用した人は170人。(平成12年~)そこから実際に独立した人は47人。また、そのうち、37人が中心市街地内で店を開いているといいます。中心は20~30代の若い世代です。ただ、この事業も過渡期を迎えており、今後、そのあり方を見直していく必要があるとのことでした。

 

※右の写真は、広場パン移動販売車。


「街なか感謝デー」で駐車場無料開放

富山市中心市街地

便利な公共交通は整備されつつありますが、富山は、まだまだ車社会です。どう郊外店から、中心市街地に人を呼び込めるか。富山市では、試みとして、年五回、「街なか感謝デー」で、駐車場の無料開放日をもうけました。

 

費用は一回4百万円かかりますが、大型商業施設の負担もあり、集客効果も1.5倍になるということで、一定の効果を上げています。恒常的に行うものではありませんが、中心市街地を知ってもらう機会としては有効のようです。

富山市中心市街地賑わい拠点創出事業の「グランドプラザ」内のフリースペースです。この他、今回の事業では、越中食彩「にぎわい横丁」という、飲食スペースを試験的にもうけています。チャレンジショップとは異なり、空き地を期限付で活用し、集客が見込める飲食店をリーシングしましたが、こちらは思ったようには、集客につながっていないということです。

 

富山市中心市街地富山の取り組みの中で、魅力的に感じたものの一つに、ミニシアター事業(市に寄贈された映画館施設を活用)がありました。現在は、平日20~50人、休日50~100人(176席)の入りということで、経営的には厳しいですが、もっとこのスペースを活用したプランというのはあると思います。

 

富山市は大学との協働も進んでいないということで、もっと、こうしたソフトを上手く使って、大学を地域に引き込んでいくことも可能でしょう。このあたりは、コーディネーターによるところが大きいと思いますが、この資源をどういかせるか。注目していきたいと思います。

 

持家率全国一、車社会のまちなか居住は進むか

富山市中心市街地

富山市は持家率全国一。中心市街地のマンションの家賃があれば、郊外に広い一軒家を持てる地域です。富山市では、高齢者の住み替え支援のほか、家賃補助も出していますが、実際に、売り出したマンションが売れ残っている現状もあります。

 

また、この街が、高齢者が暮らしやすい街を目指しているのか。転勤族など若い世代をひきつけて活性化していきたいのか。その融合を図る街なのか。今回の中心市街地活性化事業を見ても、なかなかまちの特色やそのターゲットが見えてきませんでした。

 

再開発によって、まちがきれいに整備されればされるほど、個性を失っていくケースも多くみられます。このまちで、一体どんな時間を過ごし、どんな暮らしの豊かさが得られ、どんなライフスタイルを送れるのか。それを明確にイメージすることができないなら、人をひきつけ、活気に結びつけることは非常に難しいものになります。



コンパクトシティで、富山市の中心市街地は活性化するのか?

富山市中心市街地富山市の取組みとしては、ハード面の整備は非常に進んでいますが、ソフト面ではいくつか課題がみられます。実際にまちを歩いてみて、私が感じたことをまとめてみました。 

ここでは、主に三つのポイントを挙げてみます。一つ目は、立山連峰という景観を生かしたまちづくりの視点が見られなかった点。二つ目は、日本海側という地理的・気候的特徴がまちのデザインの中で配慮されていない点。(太平洋側と比べて、冬や曇り・雨の日が多いにもかかわらず、全体的に灰色の街のデザインになっている点)

 

富山市中心市街地三つ目は、賑わい拠点が、今一つ人を引き付ける魅力に欠ける点。これは駅から、今回核となるエリア全体にいえることですが、機能性だけでない、空間デザイン、時間・季節設計、楽しませる仕掛けが必要でしょうか。特に、富山市は、他の中核市、県庁所在地等に比べて、自然が少ない印象がありました。

 

例えば、路面電車のある広島市の市街地には多くの緑、水辺が見られます。広島という文化すら漂ってくる市街地です。また、市街地から熊本城を望める熊本市や松江市なども非常に情緒ある街です。仙台市には光のページェントがあります。これが富山市といえる景観が、あの立山連峰と相まってあれば・・・と感じました。


新幹線開通に向けた、富山市の戦略とは?

富山城

平成26年度に全線開通が予定される「北陸新幹線」は、富山を通り、石川・金沢につながっていきます。場合によっては、富山は通過点になり、かつ、二時間というアクセスの良さに、逆に買い物客が東京へ流れていくことだって十分あり得ます。

 

このチャンスを富山市がどう生かすのか。富山県としては「くらしたい国富山」を標榜し、定住交流人口の拡大を掲げています。富山市でも「暮らしたいまち、訪れたいまち」を看板にシティプロモーションを行っていますが、暮らしたいまちと訪れたいまち、この二つを看板に掲げるには、富山市とはどんなまちかという「個性」「ブランドイメージ」が重要になります。

 

 

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賑わい創出のまちづくり「にぎわいづくり研究室」の設置しました。

「まちづくりの教科書No.1 中心市街地・商店街活性化編」発行しました。 

 

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