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水津陽子の地域再生リポート    中心市街地 (1) 富山市  2008.1

※無断複写転載転用禁止

水津陽子の地域再生リポート 

2008年1月22、23日と富山に行く機会があり、中心市街地活性化法(以下、中活法)改正後、認定第一号として、注目される富山市の取り組みを取材してきました。

今回の中活法改正ほか、まちづくり三法支援の中心は、都市機能の集約や街なか居住の推進など、いわゆる「コンパクトシティ」に重心を置いたものです。都市機能を中心市街地に集約化する中で、人口減少や少子高齢社会に対応していこうとするものです。

 

しかし、コンパクトシティだけで、地方の本質的課題が解決するわけではなく、中心市街地活性化という本来の目的は達成できるのか。それによって、地域全体がどう変わっていくのか。中心部のハード整備はできても、地方が最も苦手とするソフト事業、その戦略性はどう担保されているのか。

今回は、青森と並び、コンパクトシティの先駆例として、注目を集める富山市を例に、中心市街地の問題を検証していきたいと思います。

 

富山市の「中心市街地基本計画」の概要

グランドプラザ富山市の基本計画については、すでにみなさんよくご存じのように、以下の三つが柱となっています。

(1)公共交通の利便性の向上

目玉は「ライトレール」の導入による、路面電車の環状線化。目標は、5年間で乗車数を1.3倍(+3千人)へ。

(2)まちなか居住の推進
5つの地区整備により、人口増加へつなげる。目標は、5年間で、居住人口を1.1倍へ(+2500人)へ。

(3)賑わい拠点の創出

キーテナント「百貨店」の移転、広場整備(写真)等。目標は、歩行者通行量を5年間で、1.3倍(+7000人)へ。

※上記数値目標は、平成23年度までの五年間、最終目標は、26年度におかれています。

平成26年、北陸新幹線の開通に向けた取組み

富山市がコンパクトシティを目指す理由としては、他の地方都市同様、モータリゼーションの進展による市街地の郊外化や人口減少・少子高齢化があります。

富山市でも、郊外化により、除雪費用を含めた行政コストの増大を招いています。また、平成42年には、三人に一人が高齢者となり、車を運転できない市民の数が二割増加すると予測されています。中心部に機能を集め、そこへのアクセスを高めていくのが目的です。

しかし、富山市の場合、これに加えて、積極的に取り組む別の理由もあります。それが、平成26年度に予定される北陸新幹線の開通であり、平成18年、43年ぶりに人口が増加に転じたことです。

富山市は、中心市街地活性化基本計画の完成を、この新幹線開通に合せています。新幹線が開通すれば、富山市は首都圏から2時間のアクセスポイントとなります。新幹線の駅は、現在の富山駅に直結。新幹線を降りたら、当該中心市街地エリアへ。

富山駅は、富山県都への交通結節点となっている。その地の利をどう生かせるか。富山市の戦略性とは?その取組みを検証してみましょう。

首長のリーダーシップと、事業達成のスピート

富山市長

まず、今回の事業においては、首長の強いリーダーシップが発揮されました。森市長は、この事業がこうしたスピートで実現できた背景には、富山市がいち早く行った大胆な財政改革があると言います。 >>>参考、富山リンク集

多くの自治体で、LRTの導入を検討しながら、なかなか実現に至らない中、森市長は、計画から三年で実現。まさに、首長のリーダーシップの有無が、地域の命運を分けていく時代です。

富山市の中心市街地活性化区域

富山市富山市の中心市街地活性化区域を、大雑把にいえば、富山駅の南側に広がる東西2キロ、南北2.5キロのエリアになります。(写真は中心市街地南部分)

左の写真でいえば、幹線道路の下側に進むと、富山駅や県庁、市役所などがあります。写真の右上の高い建物が、旧全日空ホテル(現ANAクラウンホテル)で、その手前に富山城址公園があります。

いわゆる中心市街地(商業地)は、その左側のエリアにあたります。まちなか居住や賑わい拠点などの整備事業は、このエリアに集中しています。

計画の中核エリアは、約1キロ四方といったところです。

公共交通の利便性の向上

路面電車

富山市街地には、路面電車、コミュニティバスが走っています。しかし、今現在、路面電車は、今回、再開発がかかる中心市街地エリアを走っていません。

今回の計画では、この核となるエリアに、富山市が新たな線路を敷設し、市内電車の環状線化し、利便性を増し、歩いて暮らせるまちを実現しようとしています。この部分は来年度中には完成する予定です。

富山ライトレール富山駅北側では、すでに富山ライトレールが稼働し、予想を上回る乗車数を実現しています。これは、LRT(次世代型路面電車システム)導入において、JR時代と比べ大幅に増やしたことにあります。

本数は、JR時代、1時間に1本でしたが、ライトレールでは、平日昼間15分おきに通るようにしました。今後は、富山駅周辺を高架化し、駅の南北を循環するライトレールが走る予定になっています。

ふたつの核施設がすでに完成

市街地整備改善事業すでに整備が終わった再開発事業としては、キーテナントの大和百貨店の移転と、グランドプラザ整備事業があります。(左は百貨店、グランドプラザ、大型Pと続く通り)

今回、取材が、平日の9時から10時ということもあり、両施設はまだオープンしておらず、外観のみの取材です。

新しくなって、百貨店自体の来客数は増えているとそうです。(但し、どこまで購買につながっているかは今回取材確認する時間がありませんでした。

キーテナントのターゲットは、地元の人にお聞きすると、中高年ということで、若者向けのものは駅周辺の大型商業施設に集まっているということです。

グランドプラザ右の写真が、賑わい拠点として整備された広場です。時間的な問題もあると思いますが、閑散としています。全天候型ガラス屋根でありながら、緑などが少なく、少し無機質な印象も受けます。

人が集まったら、賑やかになる?ここをどういう空間にしたいのか。季節、時間帯で、どういう人が、どんな過ごし方ができるのか。日本海側独特の冬の灰色の空。それを、空間演出の中で、地域でどう議論され、こうなったのか。やや疑問が残ります。

成功した富山市の「チャレンジショップ事業」

移動販売車富山市のミニ・チャレンジショップ事業の成功はよく知られています。これまで、この制度を活用した人は170人。(平成12年〜)そこから実際に独立した人は47人。また、そのうち、37人が中心市街地内で店を開いているといいます。中心は20〜30代の若い世代です。(写真は参考。広場パン移動販売車)

ただ、この事業も過渡期を迎えており、今後、そのあり方を見直していく必要があるとのことでした。

「街なか感謝デー」で駐車場無料開放

駐車場便利な公共交通は整備されつつありますが、富山は、まだまだ車社会です。どう郊外店から、中心市街地に人を呼び込めるか。富山市では、試みとして、年五回、「街なか感謝デー」で、駐車場の無料開放日をもうけました。

費用は一回4百万円かかりますが、大型商業施設の負担もあり、集客効果も1.5倍になるということで、一定の効果を上げています。恒常的に行うものではありませんが、中心市街地を知ってもらう機会としては有効のようです。(オレンジの看板の向こうに居住地域の整備が進められています。)

「ミニシアター」の可能性と、「にぎわい横丁」の今後

広場写真は、賑わい拠点創出事業の「グランドプラザ」内のフリースペースです。この他、今回の事業では、越中食彩「にぎわい横丁」という、飲食スペースを試験的にもうけています。チャレンジショップとは異なり、空き地を期限付で活用し、集客が見込める飲食店をリーシングしましたが、こちらは思ったようには、集客につながっていないということです。こうした屋台村的な事業の成功例では、北の屋台が有名ですが、ややコンセプトが見えないのと、マーケティング不足なのかなという印象を受けました。(実際に見ていないのですが、パンフレットなどから)

駅へ向かう道富山の取り組みの中で、魅力的に感じたものの一つに、ミニシアター事業(市に寄贈された映画館施設を活用)がありました。現在は、平日20〜50人、休日50〜100人(176席)の入りということで、経営的には厳しいですが、もっとこのスペースを活用したプランというのはあると思います。

富山市は大学との協働も進んでいないということで、もっと、こうしたソフトを上手く使って、大学を地域に引き込んでいくことも可能でしょう。このあたりは、コーディネーターによるところが大きいと思いますが、この資源をどういかせるか。注目していきたいと思います。

持家率全国一、車社会のまちなか居住は進むか

元大和百貨店富山市は持家率全国一。中心市街地のマンションの家賃があれば、郊外に広い一軒家を持てる地域です。そこで、どういう人をこの地域に引き込んでいこうとしているのでしょうか。

富山市では、高齢者の住み替え支援のほか、家賃補助も出していますが、高齢者が住み慣れた土地を捨てることができないものです。今回の取材では、そのあたりの明確なターゲット設定が見えてきませんでした。

また、この街が、高齢者が暮らしやすい街を目指しているのか。転勤族など若い世代をひきつけて活性化していきたいのか。その融合を図る街なのか。どちらにしても、街にそのニーズを満たすものがなければ、住むのは便利な中心市街地。でも、買物は郊外に行くことになります。

そういう意味では、ハードは整備されて、利便性は確かに増すけれど、この街のそのほかの魅力やコンセプトが見えない。そういう印象を強く持ちました。

富山の酒と肴たとえば、青山だとこういう街、原宿だとこういう街、谷根千だとこういう街という個性が東京では結構あり、自分のライフスタイルに合った街を選択できます。

しかし、地方都市の場合、町がきれいに整備されればされるほど、個性を失っていくケースが多くみられます。

このまちで、一体どんな時間を過ごし、どんな暮らしの豊かさが得られ、どんなライフスタイルを送れるのか。それを明確にイメージすることができないなら、人をひきつけ、活気に結びつけることは非常に難しいものになるでしょう。

富山市の中心市街地は復活するか

本リポートでは、読まれる方の負担も考えて、簡略化したり、省略したりした部分もありますが、富山市の中心市街地活性化の取り組みについて、まとめてみました。みなさんは、富山市の取り組みをどう評価されましたか。

富山市の取組みとしては、ハード面の整備は非常に進んでいますが、前段でも出てきたソフト面ではいくつか課題も見つかりました。

 

以下では、今回の富山市の取材の中で、私が感じた中心市街地活性化事業の課題を、富山市を例にとって、まとめてみます。 

わたしが感じた「富山市のもったいない」

富山城址

細かく言えば、個々の事業の課題が見つかりますが、ここでは、主に三つのポイントを挙げてみます。

一つ目は、立山連峰という景観を生かしたまちづくりの視点が見られなかった点。

二つ目は、日本海側という地理的・気候的特徴がまちのデザインの中で配慮されていない点。(太平洋側と比べて、冬や曇り・雨の日が多いにもかかわらず、全体的に灰色の街のデザインになっている点)

三つ目は、賑わい拠点が、今一つ人を引き付ける魅力に欠ける点。これは駅から、今回核となるエリア全体にいえることですが、機能性だけでない、空間デザイン、時間・季節設計、楽しませる仕掛けが必要でしょうか。

特に、富山市は、他の中核市、県庁所在地等に比べて、自然が少ない印象がありました。例えば、路面電車のある広島市の市街地には多くの緑、水辺が見られます。広島という文化すら漂ってくる市街地です。また、市街地から熊本城を望める熊本市や松江市なども非常に情緒ある街です。仙台市には光のページェントがあります。

何か、これが富山市といえる景観が、あの立山連峰と相まってあれば・・・と感じました。

 

 

滝沢真美さん

Lohasbusiness.jp ロハスビジネス対談

カラーコーディネーター 滝沢真美×水津陽子

まちづくりの色の使い方、活かし方  >>>対談を見る


 

新幹線開通に向けた、富山市の戦略とは?

市街地実は、今回最も聞きたかったのは、富山というか、北陸の課題と考えていた、平成26年度開通が予定される北陸新幹線に向けての、富山県や富山市の戦略でした。

新幹線は、富山を通り、石川・金沢につながっていきます。場合によっては、富山は通過点になり、かつ、二時間というアクセスの良さに、逆に買い物客が東京へ流れていくことだって十分あり得ることです。(橋ができて、徳島から神戸に人が流れていったなど、こうした例は枚挙にいとまがありません)

しかし、今回の取材の中では、北陸における広域連携、その戦略は見えてきませんでした。九州では、広域地方計画もまとまり、ひとつの九州という動きも出てきています。

一つには、富山市の豊かさというものがあり、単独でやっていけるといういことがあるのかもしれません。富山市の産業の中心は中間財に関わるもので、人口減少=産業の衰退に結びつかない、域内市場産業の衰退=地域活力の減退はない点、市長も挙げられました。

富山市は高い共働き率で、勤労者世帯実収入や消費支出か全国一です。富山市は、先般の合併で、富山県の38%の人口を占め、人口も増加に転じています。富山市、あるいは、富山県としては、今のところ、その必要は感じておられないようでした。

そもそも隣の県とは仲が悪いということも、よくあることですが、しかし、北陸新幹線の天の利、地の利を最大化するなら、北陸として連携し、地域が得る利益を最大化するのがやはり得策ではないかと思います。

隣の県と競うより、協力した方がお互いに利益がある。肉を切らして、骨を切るではありませんが、自ら折れ、他を立てることによって、自分も生きるという戦略を、今後、どこかの地域で見れたらいいなと思います。
 

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富山市「中心市街地活性化」関連リンク

 

今回のリポートは、富山市に講演でお邪魔した際、富山市長、(株)まちづくりとやまに、インタビューのお時間を頂き、当該地区の現地取材や地元のみなさんとの懇談から、構成したものです。限られた時間の取材であり、全てを網羅するものではありません。

富山市の取り組みについては、詳しくは、以下の記事などを参照ください。

 

富山市中心市街地活性化 

富山市中心市街地活性化基本計画 

富山氏中心市街地活性化協議会

(株)まちづくりとやま

コミュニティバス「まいどはや」

富山ライトレール(株)

街元気プロジェクト「富山県富山市」(動画あり)

日経ビジネスNBonline「都市再構築の起爆剤になる富山ライトレール」(2007.2)

まちづくり新聞「中心部をLRT再生」(2006.5)

国交省「LRTの導入支援」

出張ミシュラン〜富山編

富山ミシュラン出張先の、アクセス、ホテル、飲食店、そのサービスとホスピタリティなどを評価する「出張ミシュラン」。富山編も作ってみました。富山は、星いくつ?

出張ミシュラン〜富山編はこちら


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