
観光旅行のニーズが多様化する中、最近、高い人気を得ているものの一つが、「おとなの社会科見学ツアー」「産業観光」です。近年、「産業遺産」「農業遺産」「ジオパーク」など、優れた地域資源の認定を行う制度も生まれ、これまでスポットライトが当らなかった地域資源の「価値の見直し」もはじまっています。
一方、2008年JTBと沖縄県は、法人顧客向け旅行「CSRツーリズム」を提案。企業のCSR(企業の社会的責任)活動の中、企業がブランドイメージの向上を目指して行う環境保護や社会貢献活動などに着目した「社会貢献型のツアー」が企画され、地域資源活用の新たなパートナーシップとして注目されました。2011年震災後、復興支援のボランティアツアーなど、社会貢献型ツアーへの関心も一気に高まっています。
大人の社会科見学ツアーに火がついたのは、2007年。コンビナートや工場を愛する「工場萌え」は一大ブームとなり、工場見学を企画する自治体も多数生まれました。また、同2007年、国は「産業遺産活用委員会」を設置。2009年に「近代化産業群33」を認定し、一気に「産業観光」への関心が高まりました。
今では、マニア向けの「工場萌えツアー」から、食品や雑貨などの工場に行くツアーまで、地域がこぞって、様々なタイプの「社会見学ツアー」を企画し、中には、数ヶ月先まで予約で埋まる人気ツアーまで生まれています。
自治体の取り組みとしては、川崎市はJTB首都圏と組み、「川崎工場夜景パスツアー」を企画するなど、スタディツーリズムとしての「産業観光」に力を入れています。「工場萌え」に関しては、川崎市のほか、千葉県、四日市市、北九州市、尼崎市などの取り組みが有名です。
一方、「産業遺産観光」については、まだまだ黎明期にあります。これは地質や考古学的な価値を認定する「ジオパーク」や2011年日本では能登が初めて認定された「世界農業遺産」などと同様、「世界遺産」と比べると、知名度や認知度が低く、まだ一般にはそれほど注目されていないことが背景にあります。産業遺産を抱える自治体では、今、これをどう生かすか、模索しています。
しかし、近代化産業遺産群33にも認定された、長崎県の「軍艦島」(正式名は端島)は、人気アーティストのPVロケ地になったこともあり、アーティストや廃墟好きなどのファンが大挙して押し寄せ、上陸ツアー開始以降、すでに20万人が上陸する人気ツアーとなっています。どうすれば、その貴重な地域資源を「観光資源化」できるのか。その一つの答えが、この軍艦島ツアーの魅力を探ることで見えてきます。
・ツアーレポート 廃墟ファンの悲願!「軍艦島上陸作戦」~軍艦島の魅力 ![]()
CSRツーリズムを標榜し活動を行っている地域としては、JCBとツアーを企画した「沖縄エコツーリズム推進協議会」のほか、「宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会(山口県)」の大人の社会科ツアーがあります。山口の取り組みでは、三つの地域の経済団体、企業、市民グループや行政機関が共同し、着地型観光エージェントとして協議会を設置。「CSRツーリズムかるた」の制作など、独自の取り組みが見られます。
CSRツーリズムは、まだそうしたものがあるということすら、知られていませんし、これからも言葉としては、それほど大きな広がりを持たないかもしれませんが、こうした企業を巻き込んだ新たな観光の可能性、一つの手法としては、今後、もっと活用を検討すべきでしょう。企業に限らず、社会貢献意識は震災以降、高まりを見せています。
震災後、大手旅行各社は、東北復興支援のボランティアツアーをこぞって企画し、実際に多数の参加者を得ています。東京都では、観光で被災地を支援する「被災地応援ツアー」の事業者を募集し、ツアー申込者一人につき3000円、述べ5万泊分を助成するとしています。
震災以前から、国民の社会貢献への意欲は、ここ数年60%を超える高い数字を示していました(国民生活白書)が、震災後は、さらにその参加意欲が高まっています。実際に参加する人も増え、社員のボランティア参加に企業が助成する動きも加速しています。
震災後、人とのつながり、絆への希求も高く、このトレンドは、今後も、続いていくと予測されています。この機に、地域がいかにこの意欲の受け皿になれるか。CSRツーリズムという言葉はなくとも、社会貢献型のツーリズムを形成していけるか。どの地域がその先駆となるか。そういう意味では、非常に大きなツーリズムの可能性を秘めた市場といえます。
観光まちづくり・ニューツーリズムはこちら
・「近代化産業遺産群33」認定(経済産業省)
・NPO法人沖縄エコツーリズム推進協議会「CSRツーリズム報告書(H20)」
・宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会「大人の社会派ツアー」
・「全国工場見学ナビ」(学研キッズネット)
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