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2011.7.25 フジサンケイビジネスアイ「inovations-i」コラム寄稿
5月25日、今回の東日本大震災に対し、ロシアからミネラル・ウォーター3万本(50t)が、被災地に送られた。と聞いても、特別なニュースにも感じないが、ロシアがこの救援物資を横浜でも神戸でもなく、島根県西部の小さなまち、浜田に送ることにこだわったと聞いたらどうだろう。
ロシア・ウラジオストック港と直接結ぶ、国内初の貨物輸送航路を持ち、今年はじめには、そこからシベリア鉄道を経由し、首都モスクワ、ロシア第二の都市サンクトペテルブルグへ、最短26日で入るルートを拓いた「浜田港」。その道筋を作ったのが、浜田港に拠点を持ち、ロシアとの太いパイプを持つ、中小企業、株式会社エル・アイ・ビー(LIB)だ。前編に続き、お送りしたい。


写真提供:浜田港振興会
対ロシア貿易には、日本海側で大きな港を持つ自治体は、目の色を変えて取り組んでいる。秋田、境港、北九州、どこも戦略的な予算と専門人員を配し、行政の強いリーダーシップが見える。しかし、浜田においてロシア貿易を主導し、道筋を作ってきたのは、自らリスクを取り、挑戦する中小企業LIBだった。
LIBはウラジオストックと周辺地域を含め120万人の極東ロシアで、強い信頼関係を築いてきた。その信頼が、送るなら浜田のロシアのこだわりにつながった。その信頼の基盤は、今、LIBのヨーロッパロシア進出への大きな力になっている。首都モスクワ1000万人、サンクトペテルブルグ450万人という巨大ヨーロッパロシア市場へ、LIBの挑戦がはじまっている。
LIB高橋克弘社長にお話をお伺いする中で、ロシアリスクについて訊ねてみた。ロシアビジネスは魅力的ではあるが、日本人からすると、ロシアは何を考えているのか、今一つよくわからないイメージがある。


これに対し、高橋社長はヨーロッパロシアと極東ロシアの気質の違いについて教えてくれた。ロシアと一口にいっても、ウラル山脈の西と東で、ロシア人の気質はかなり違う。ヨーロッパロシアは狩猟民。ウラジオストックなどの極東ロシアは農耕民。彼らは東洋的で、日本人に近いという。
現在、LIBはウラジオストックに事務所を持ち、島根県がウラジオストックに開設した「しまねビジネスサポートセンター」の業務も受託している。ロシアにおける初の日本の子ども用品店のオープン、建材や瓦、室内ドアのアンテナショップ開設のプロデュースも行っている。ロシア貿易に関しては、今や船舶荷役、保税蔵置場管理、通関業を一括して行うまでになっている。
そんな中、取引先のロシア企業が、サンクトペテルブルグに拠点を構える。それがLIBのヨーロッパロシア進出の足掛かりとなる。平成22年6月、LIBはサンクトペテルブルグへ「石州瓦」3万枚を初輸出する。9月にはロシア国内屈指の国際見本市「第14回バルチック建設週間」に日本建材では唯一のブースを出展。地震や寒さに強い「石州瓦」、建材などをアピールした。
ロシアの富裕層には、他人とは違う屋根材を使いたいという欲求があるという。「石州瓦(せきしゅうかわら)」は島根県西部の石見地方で焼かれている瓦で、焼成温度が1200度と高く、固くて丈夫、寒さに強いとされている。また、その赤銅色は独特で美しい。
サンクトペテルブルグには、ドイツやフランスなど欧州から、大量の生鮮品、日用品が入り込んでいる。決して、生易しい市場ではない。しかし、極東ロシアで受け入れられた実績は、ヨーロッパロシアでも有効な宣伝材料になる。
LIBのもう一つ強みは、今回のヨーロッパロシアへの新たな輸送ルートの確立にある。従来の韓国・釜山港、スエズ運河を経由してヨーロッパロシアに入る海上ルートでは、41~42日の輸送日数がかかった。それが新ルートでは、最大4割(19日)短縮、最短26日で到達することが実証された。
ロシア市場進出では、秋田県がシーアンドレール構想を掲げ、同様の実験を試みたが、秋田港と極東ロシアを結ぶ航路がないため、頓挫している。浜田の新ルートはコスト面でも、TEU(20フィートコンテナ)一個につき44万円。従来ルート43万円とほとんど変わらない。高いコストパフォーマンスを見せている。
LIBがロシアビジネスに取り組む中では、2008年のリーマンショック、2009年のロシア政府による外国自動車の輸入関税の引き上げなど、厳しい局面がいくつかあった。そこへ、今回の震災、原発事故だ。日本からの輸出品には厳しい生産地規制がかかっている。
国際基準は年間1ミリシーベルト。出荷時に放射能の測定する手間と証明コストは大変なものだ。測定方法によって、微妙に数値が異なるため、出荷地で基準をクリアして出荷したものの、現地の測定で基準を上回り、受け取りを拒否される例もあるという。
高橋社長は、「これまで日本はジャパンブランドにあぐらをかいて、ただオファーに応えてきただけ。だから韓国に負ける。今回のことで、安心安全のジャパンブランドは崩壊した。これからは被爆国の商品を、一から説明して、納得して買ってもらう。そういう地道な取り組みをしていかなくてはならない」といわれた。
震災からの復興、日本再生は、企業がこうした気概を持ち、世界を市場とすることで、はじめて実現されるのではないだろうか。チャンスは目の前にある。それに果敢に挑み、精一杯、戦ってほしい。
LIBの歴史
平成9年 (1997年) |
浜田商工会議所に「海外取引研究会」発足。 |
平成10年 |
11月 研究会メンバーにより、コンテナ30TEUの荷を浜田港に入港させる。 |
平成12年 |
中古車輸出5000台(7億5千万円) |
平成13年 |
平成13年 中古車売上5,000台(7億5千万円)を達成。 |
平成17年 |
チューブの中古車輸出額 年間約57億円(輸出の94%) |
平成18年 (2006年) |
7月 株式会社エル・アイ・ビー設立。 |
平成19年 (2007年) |
5月 ウラジオストック経済ミッション(商談会) |
平成20年 (2008年) |
3月 船舶荷役業務開始 |
平成21年 (2009年) |
8月 浜田港で保税蔵置場許可取得、保税蔵置場管理業務開始。 |
平成22年 (2010年) |
6月 ヨーロッパロシア・サンクトペテルブルグへ「石州瓦」を初輸出。 |
平成23年 (2011年) |
1月 米(JAいわみ中央)をウラジオストックへ輸出。 |
※浜田港振興会
浜田港は、国の重点港湾。国際物流、特に対ロシア貿易の戦略拠点として、注目されはじめています。浜田港の振興については、島根県、浜田市と民間企業が出資し、平成6年に「浜田港振興会」を設立しています。
参考リンク
恋するまち・商店街~地域活性化・まちづくりコンサルタントの全国漫遊記
http://machitabi.blog89.fc2.com/

コラム「地域発!こだわり企業が全国区になる 顧客満足と差別化のポイント(全10回)」は、2011年6~8月、フジサンケイビジネスアイ「イノベーションズアイ」に寄稿したものです。
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○新ルートでロシア貿易に新たなチャンス!(後)
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