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バブルの負の遺産が年間300万人を呼ぶ観光地へ 高知「ひろめ市場」

2011.7.11 フジサンケイビジネスアイ「inovations-i」コラム寄稿

 

2010年、ピークを迎えた「B級ご当地グルメ」ブーム。首都圏開催となった、昨年の「B-1グランプリ」第5回の来場者は43万5千人に達した。その本来の目的は「食を通じた地域のPR」であり、「地域活性化を目的としたまちおこし」だったが、コンセプトは十分浸透せず、ご当地グルメブーム、B級グルメブームが独り歩きし、ブームもすでに下火という声もある。


グランプリで優勝すれば、一時マスコミでちやほやされるが、それ以外は注目度も高くない。ご当地グルメで、どれだけ地域に人を呼び、地域活性化や観光の起爆剤とできるか。数年で消えないためには、安易なグランプリ頼みではない、ビジネスモデルの構築が不可欠となる。


今回は、年間300万人を集める「ひろめ市場」を例に、その成功の秘密に迫りたい。

 

高知と姫路、二つのひろめ市場の明暗。成功と破産の分かれ目

高知城ひろめ市場高知中心市街地

ひろめ市場は、平成10年、高知市の中心にある帯屋町2丁目商店街の中にオープンした。敷地面積4056平米、一階に65の店舗、二階に212台の駐車場を有す巨大な”屋台村”だ。高知の特産品や食が一堂に会す。周辺には、県庁や市役所、高知城、「高知の台所」といわれる大橋通商店街、大丸などがあり、一見、好立地に思えるが、位置的には西の端になり、洋品店など、日用品ではないものが多く、衰退ぎみだった。


ひろめ市場の構想を思いついたのは、当時、帯屋町2丁目振興組合の理事長をしていた岩目一郎氏。当時、そこは160台分の駐車場だったが、1200坪の敷地で、売上は月600万円。バブル崩壊後、不良債権化し、政府の支援機関「民都機構」の所有となり、塩漬けになっていた。


最初は、その一角、100坪ほどの空きスペースを借り受け、テントを立てた仮設の屋台村で、饅頭や味噌焼、魚などを売るイベント形式からスタートした。当初は10カ月の約束だったが、それが人気で、売上も伸びたことから、次のステップが見えてくる。飛躍の足掛かりとなったのは「よさこい祭り」だった。


祭り当日は、駐車場入り口が塞がれてしまう。それを逆手に、祭りの期間「よさこいパーク」と銘打ち、踊り子の休憩所や観光客向けの屋台村として大成功を収める。その実績を背に、本格的な「ひろめ市場」構想の実現に向けて動き出す。ひろめ市場構想は、1200坪の敷地に、1000坪の建物を立て、一階を店舗やイベントスペースに、二階を駐車場にするというものだったが、問題は建設費と地権者の了承。岩目氏は行政頼みでなく、地元の建設会社などに構想を持ち込み、働きかけた。詳しくは、岩目氏が「ひろめ市場誕生秘話」に書かれているので、そちらをご覧頂きたい。


実は、「ひろめ市場」は、この高知の成功の後、姫路モデルが展開されたが失敗している。甘い経営見通しで、最後は訴訟にまで至った。当初、来場者400万人を見込んだが、実際の来場者は40分の1。出店者も思うように集まらなかったという。姫路ひろめ市場は、平成16年に破産宣告、閉鎖となっている。何故、高知は成功し、姫路は失敗したのか。

 


地元に愛され、平日も大盛況。人気は人気レストランの「塩たたき」

ひろめ市場「塩たたき」ひろめ市場

2010年12月、龍馬伝で沸く高知に行った。高知でお昼、どこに行けばいいと聞くと、ほとんどの人がひろめ市場を勧める。平日の昼時、そこには地元の人の姿が多くみられた。サラリーマン、商店街に買い物に来た高齢者、多種多様な人の姿があった。平日のせいか、観光客らしき人の姿はあまり見なかった。


人が入れ換わり、立ちかわり人がやってきて、回転率も高い。活気に溢れるとは、こういうことをいうのだと改めて思う。その活気が、楽しさになる。そういう空気、場は人を高揚させる。ひろめ市場には、その空気がみなぎっていた。一番の活気は、中央のフードコートに陣取る「明神丸」。人気店らしく、広いスペースを持っている。そこにサラリーマンが行列していた。


「ひろめ市場」には65の店舗があり、高知の特産品もあれば、本格的なインドカレーやスイーツの店など、多様な飲食が見られる。肉もあれば、魚もある。好きな店で、好きなものを買って、フードコートに持ち込み、食べることもできるが、行列の理由を知るべく、並んでみた。


高知といえば、看板は「鰹のたたき」。明神丸はそのタタキの専門店だが、ほとんどのサラリーマンが「塩タタキ」を注文していた。タタキといえばポン酢、と思っている人間には抵抗があったが、試しに頼んでみた。その旨さは唸るほど。一つは、その歯ごたえ。塩で食べて旨いと感じるには、その鮮度が絶対条件となる。現に、東京に戻ってスーパーで買ってきた鰹で試してみたが、生臭くて食べられたものではなかった。これはもう、ご当地ならではの代物だ。


ひろめ市場の強さは、まず地元に愛されていることにある。価格もリーズナブルで、地元の人でも利用しやすい。店舗も多様で、毎日来ても飽きない。一度来たら、もういいやではなく、毎日でも来てくれる地元リピーターがいるからこそ、年間300万人が実現可能となる。その地元の支持が、活気を生んでいた。

 

問われる「ご当地グルメ」の真価とビジネスチャンス

みろく横丁みろく横丁みろく横丁屋台

八戸市「みろく横丁」屋台村

 

B級と冠した「ご当地グルメ」も一回りした感があり、市場には次の飢餓感がある。放射能問題もあるが、震災は消費者の食や消費への意識を、根本から変えつつある。外食や余暇活動などの非日常消費の変化は徐々に進んできたが、それにも一気に拍車がかかった。


ご当地グルメによる地域活性化の取り組みには、500億円の経済効果を挙げる「富士宮焼きそば」のほか、北海道の「北の屋台」やせんべい汁で知られる八戸の「みろく横丁」などの屋台村の取り組みもある。ただ、道の駅などの産直市場やご当地グルメには過剰感もあり、一部で淘汰も始まっている。

 

青森の雪景色青森市「古川市場」のっけ丼

青森市「古川市場」「のっけ丼」


2010年2月、東北新幹線「新青森駅」開業へ、青森では観光客取り込みに向け「のっけ丼」など、地域資源を活用した新たな観光資源の開発も行われていた。市場を回り、気に入った魚の切り身をごはんにのっけていくもので、魅力的ではあったが、ビジネスモデルの構築や場の形成はこれからだった。その後、どうなっているだろうか。


ご当地グルメが、単に地産地消、ご当地を謳うだけでは、ブレイクできないところにきている。客をひきつけるのは、一つには「キラーコンテンツ」だが、これからは「場」の形成が大きなカギとなる。言うままでもないが、それは単なる「場所」「ハコモノ」ではなく、「臨場感」をどう創るかにかかっている。

 

 

参考リンク

恋するまち・商店街~龍馬で沸く「高知」観光、まちあるきルポ

http://machitabi.blog89.fc2.com/blog-entry-374.html

恋するまち・商店街ブログ

 

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コラム「地域発!こだわり企業が全国区になる 顧客満足と差別化のポイント(全10回)」は、2011年6~8月、フジサンケイビジネスアイ「イノベーションズアイ」に寄稿したものです。

 

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