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2007年6月、デンマーク・スヴェンボーに赴き、地方分権の推進、道州制の導入を目指す日本に多くのヒントを与えてくれるデンマークの試みを取材。2007年9/21(金)デンマーク・スヴェンボー市視察報告会でもご報告させて頂きました。
また、日経グローカル( 2007.11.19 NO.88)「グローバル・リポート」に以下、掲載させて頂きましたので、ここにその一部、ご紹介させて頂きます。
※視察概要・報告会の詳細はこちらでご覧頂けます。 持続可能な未来プロジェクト
※地方自治体、各地域支援団体様に、全文リポートを提供します。 詳しくはこちら
デンマークで道州制%ア入 市の権限強化で何が変わったか?
2007年1月、デンマークは地方自治制度を転換した。県を廃して、道州のような新たな広域圏へ再編するとともに、基礎自治体の数を3分の1近くに削減する大がかりな「地方自治の構造改革」を断行した。そのデンマークで、注目を集めているのが、人口5万8千人の地方都市でありながら、新たな自治体経営の手法を取り入れ、地域経営や産業振興で成果を上げているスヴェンボー市だ。
・強く、持続可能な「基礎的自治体」の人口は3万以上
・バリューベースの市政〜公務員に360度評価を導入
・首都からのクリエイティブ・クラスの大量移住のワケ
・求められる地方の再生につながる地方分権
強く、持続可能な「基礎的自治体」の人口は3万以上
デンマークの地方自治の構造改革は、2001年の総選挙で誕生した、自由党・保守党連立のラスムセン政権の下で進められ、2007年1月1日、ついに新制度に移行した。塗り替わったデンマークの地図は、14のアムト(県)を廃し、5つのリージョン(新広域圏)へ再編統合するとともに、改革前271あったコミューン(基礎的自治体=市に相当)を98に削減するという大胆なものだった。
改革の目的は、様々な課題を、市民により近いところで効率的に解決する「より強く、持続可能な自治体」の創造にある。改革の背景には、先進国共通の課題である「人口の高齢化」「グローバル化」「知識経済社会」がある。「高福祉」で知られるデンマークだが、今後、高齢者人口が増えれば、社会保障費の増大は避けられない。とはいえ、今以上の「高負担」を国民に求めることも現実的ではない。
国際的にみれば、デンマークは、政治、財政の両方で、地方分権が進んでいる。しかし、1970年代の地方政治改革からすでに30年が経ち、現状の地方自治構造では、これからデンマーク社会が直面する課題に対応していくことは難しい。ラスムセン首相は、2002年に行政改革構造委員会を設置した。
委員会は、将来の負担に耐えられる自治体の規模と、国、県、市の権限と役割がどうあるべきかを検討。2004年に発表した「地方自治構造改革」の報告書では、あるべき公共のモデルと改革を成功させるための提案をした。
その中で、市により多くの権限を移管するため、合併により誕生する市の規模(維持能力)は人口3万人以上とした。これに基づいて改革を行った結果、人口2万人以下の自治体は7つになり、自治体の平均人口は改革前の2万人以下から5万5千人に増加した。
バリューベースの市政〜公務員に360度評価を導入

改革は、より強力で、持続可能な自治体をつくるため、市の合併を進めるが、市の数が減る一方、新しい市は、権限の委譲と同時に、より多くの課題と責任を負うことになる。国の管理下で細かく指示されることはなくなるが、反面、自ら計画と目標を作り、それを達成する能力も求められる。その中で、新市のリーダーシップをどうとっていくのかは、新らたな基礎的自治体共通の課題である。
スヴェンボー市は、新市への統合へ向けて、幾つかの政策を戦略的に進めてきた。
合併前のスヴェンボー市の人口は4万3千人。合併するのは、規模の小さい近隣の二つの自治体だった。それぞれに異なる地域のニーズや文化を持っている。異なる組織、運営、組織文化もある。市町村合併の課題は、大きく二つ。
・衝突をいかに回避し、新市へ統合するのか
・合併による利益を個々の地域が得るための「一体感」をどう創造するのか
その合意形成のプロセスと、共通の利益を見出すためバリューは興味深いものだった。また、そのバリュー実現のため、最重要課題に掲げられたのが「新しいスタイルのリーダーシップ」への取り組みだ。スヴェンボー市の人口の約一割が公務員。その組織と職員がより良い成果を上げるため、
スヴェンボー市は「リーダーの360度の評価制度」を導入した。
ただ、評価はあくまで、「職員が各自の作業が影響を及ぼし合うことを認識し、協力しあい、仕事を達成する」ためのもので、日本の成果主義のように、点数をつけて序列、同僚と競い争い疲弊させるような評価ではない。あくまで、組織自体が高い生産性と競争力を実現するたの戦略と合理性に立脚したものだ。
首都からのクリエイティブ・クラスの大量移住のワケ

今回、スヴェンボーに行きたいと思った理由の一つは、スヴェンボーに起きている、クリエイティブ・クラスと呼ばれる、創造的な仕事に携わり、経済を成長させる価値を生み出す、経済的にも、精神的にも豊かな人たちの、首都コペンハーゲンからの大量移住だった。しかも、彼らは団塊シニアとかではなく、20代から40代の現役、子育て世代。その数は、すでに60人を超えている。
たとえば、日本の人口5万の地方都市に、東京で活躍する現役のキャリアが60人集中して移住するなど、まずあり得ない。何故、彼らはスヴェンボーに移り住むことにしたのか。私は、スヴェンボー在住のクリエイティブ・クラスのネットワーク「GE9」のメンバーに話を聞いた。 >>>詳しくはこちら「水津陽子デンマークリポート」
彼らがスヴェンボーを選んだ理由の一つ、それが、ワーク・ライフ・バランス(仕事との家庭生活の調和)であり、自然豊かな中で、家族と過ごす時間を持ち、人間らしい生き方をすることだった。
知識経済社会の中で、経済を成長させる価値を生み出す人材は、経済的豊かさだけでなく、精神的な豊かさも重視する。条件が整えば、より自分にとって良い環境に移り住むことは、今後も充分あり得ることなのだ。
こうした成功は、今後、日本の同じ規模の自治体にとっても、参考にすべきモデルの一つとなるだろう。
求められる地方の再生につながる地方分権
デンマークにおける「地方自治構造改革−より強い、持続可能な自治体の創造」への戦略とプロセスを改めて追っていくと、その強さの根底には、国や地域の在り方について、市民が参加して意思決定を行い、国のあり方を決めていく「参加型民主主義」があることに気づく。
国が地域のあり方を規定するのではなく、国民と地域の声が国のあり方を変えていくという発想は、日本の道州制やふるさと納税などの議論には全く見当たらない。
地方の自立と持続可能性を実現することは、国の持続可能性を左右する。
地方分権は、権限(政治的権限と財源)の委譲と、それに伴う責任セットになっている。しかし、国はきないから地方にやらせないのではなく、地方を自立させる戦略を持ち、必要な移行期間と資金、ノウハウの提供を政策として行っていくべきだ。最も必要なのは制度ではなく、この国の将来の明確なビジョンとそれを実現する戦略とプロセスだろう。
EU各国は2000年以降、「今後10年で、世界でもっとも競争力があり、もっとダイナミックな知識集約型の経済をもつ地域になること」を目標に、生産性と競争力を高める政策を推進。デンマークも地方行政構造改革をはじめ、様々な改革に取り組んできた。その結果、その達成度を評価する「リスボン戦略レビュー2006」では、デンマークは生産性と競争力において、EU25ヶ国中トップとなった。
デンマークに学ぶべきは制度ではなく、この戦略性と合理性だ。
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