

近年、レジャーの日常化がいわれています。その中で、健康をテーマにした「レジャー市場」が伸びをみせています。たとえば、「ウォーキング」の参加人口は2008年には3020万人でしたが、2011年には4510万人へ150%の伸びをみせています。
ジョギングやマラソン、サイクリングのほか、「ニュー・レジャー」と呼ばれる、簡易ゴルフやフットサル、温浴施設、ペットと遊ぶ、貸し農園、バーベキューなどの参加人口は拡大傾向にあります。ニューツーリズムの流れの中、医療観光、福祉観光などの取り組みも生まれています。ここでは、レジャー観光の中の「ヘルスツーリズム」の可能性を検証してみましょう。
ヘルスツーリズムとは、国の定義では「自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復・増進・保持する新しい観光形態であり、医療に近いものからレジャーに近いものまで様々なものが含まれる」とされています。
区分としては、医療行為を受ける「メディカルツーリズム(医療観光)」と、「温泉療法」や「タラソテラピー」、「森林セラピー」や「スパ・エステ」「食養生」など、健康増進やリフレッシュの健康レジャー、スポーツなどの「ウェルネスツーリズム(心身の健康維持・増進を図る観光)」は明確に分けられます。
また、ウェルルスツーリズムの中でも、温泉療法などのように、医学的な根拠に基づくもので、長期滞在・療養型のものと、癒しやリフレッシュ系のもの、よりレジャー色の強いものは区分されます。福祉観光はやや特別な存在に感じられますが、海外では、介護者の休養「レスバイトツーリズム」として確立されたものもあります。福祉観光の観点では、今後高齢社会の中、バリアフリーやユニバーサルデザインは、観光の中でも、より強く意識する必要が生まれるでしょう。
地域が目指すヘルスツーリズムが、「療養型」か「健康増進型」か「リフレッシュ(元気回復)型」か「レスバイト(休息・息抜き)型」か「レジャー型」かなど、モデル、コンセプトは明確に規定しましょう。
ちなみにWHO(世界保健機関)による健康の定義は、「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」であり、その中には「スピリチュアル(人間の尊厳の確保や生活の質)」も含まれています。
健康アクティビティの種類
| 健康療法 | 健康レジャー | スポーツ |
| 温泉療法 | エステ | ウォーキング(歩く) |
| スパ | マッサージ | マラソン(走る) |
| クアオルト(療養) | ピクニック | トレッキング(登山) |
| 森林セラピー | まちあるき | サイクリング |
| タラソテラピー | 貸し農園 | 簡易ゴルフ |
| アニマルセラピー | エコツーリズム | フットサル |
| 食養生 | グリーンツーリズム | 乗馬など |
※メディカルツーリズム(医療観光)については、日本は後発で、タイが先進国として知られています。近年、美容整形で韓国に行く人も増えていますが、日本の場合、医療の優位性のほか、現場の受け入れ態勢、言語、費用の面などが課題としてあります。
地域が有する「自然」や「健康アクティビティ」を生かした観光「ヘルスツーリズム」の市場規模はどのくらいあるのでしょうか。健康関連の市場規模は概ね、健康機器具・健康用品3000億円、健康食品1兆5,000億円、スポーツ・健康維持増進サービス3兆円といわれています。直近の余暇レジャーの潜在需要は、オートキャンプ、登山、ピクニックなど、アウトドア系のニーズが上位にランクインしています。
余暇活動の参加・消費の実態(平成22年)
余暇活動 |
参加人口 |
年間活動回数 |
年間平均費用 |
国内旅行(温泉、避暑など) |
6150万人 |
3.5回 |
101,000円 |
ピクニック、野外散歩など |
3380万人 |
9.3回 |
14,400円 |
登山 |
1070万人 |
5.1回 |
29,400円 |
オートキャンプ |
430万人 |
2.3回 |
29,500円 |
フィールドアスレチック |
240万人 |
2.4回 |
7,400円 |
海水浴 |
1480万人 |
2.5回 |
15,800円 |
サイクリング、サイクルスポーツ |
2570万人 |
33.6回 |
7.300円 |
ジョギング・マラソン |
1360万人 |
27.0回 |
13,300円 |
乗馬 |
70万人 |
2.7回 |
53,700円 |
動物園、水族館など |
4800万人 |
3.0回 |
8,400円 |
※レジャー白書2011年より
2011年のレジャー白書では、男性の10~20代若年層で「登山」が第二位。20~30代で「オートキャンプ」や「バーベキュー」への関心の高さが窺えます。女性ではここしばらく停滞が見られた「海水浴」に10~20代で高い数字が出ています。ここ数年の「山ガール」ブームは健在で、20~40台で高くなっています。
平成22年(2010年)の余暇市場は67兆9750億円となりました。20世紀には90兆円を超えていた市場は、20数年で20兆円縮小したことになります。人口減少などの要因から、今後も、この縮小傾向は続くと考えられます。どの市場にニーズがあるのか、市場規模などの分析も行いながら、地域にとって有望な市場、ツーリズムのかたちを探っていくことが大切です。
スポーツツーリズムは、SIT(スペシャルインタレストツーリズム)の一つに位置付けられる観光です。スポーツをする、または観戦を目的とした観光の取り組みは、国も「スポーツツーリズム推進基本方針」を定め、スポーツ観光を推進しています。
2007年にスタートした「東京マラソン」は、今や申込者数29万人超、多数のスポンサーやボランティアが参加する一大イベントとなり、2010年、国際陸上競技連盟(IAAF)が世界の主要ロードレースを格付けするラベリング制度において、最高位のゴールドラベルを取得しました。2002サッカーワールドカップ日韓大会では、日本全国でキャンプ地の誘致合戦が繰り広げられ、ワールドカップ観戦のため海外からも多くの人が訪れました。
一方、近年「スキー」や「海水浴」などは参加人口が減少傾向にあります。温暖化や紫外線など、環境変化による要因もありますが、背景として大きいのは、やはり国民のレジャーに関する意識や行動の変化です。レジャーにおける「選択投資型消費」の傾向は強くなっています。
| スポーツをする(参加型ツーリズム) | スポーツを見る(観戦型ツーリズム) |
| スポーツ合宿(自然、気候、施設等) | オリンピック・ワールドカップサッカー |
| スポーツイベント(市民マラソン、競技会等) | モータースポーツ(F1等) |
| マリンスポーツ(海水浴、ヨット、サーフィン等) | スポーツ観戦(野球、サッカー等) |
| モータースポーツ(バイク、自転車等) | スポーツ大会観戦(マラソン等) |
| ウインタースポーツ(スキー、スケート等) | キャンプ観戦(野球等) |
| インドアスポーツ(スポーツクラブ等) | ファン交流、グッズ・ウェア販売など |
| アウトドアスポーツ(登山、トライアスロン等) | スポーツアトラクション(博物館) |
スポーツツーリズムの経済効果としては、イベント型では、小・中規模でも大きな経済効果が期待されます。たとえば、観光庁によれば、石垣島トライアスロン大会(参加者7400人)は、直接の経済効果3億6千万円、全ての経済効果6億1900万円とされています。
人々が、レジャーに求めるもののかたちも日々変化していますが、健康や癒しを求める人々のニーズはもちろん、震災以降、特に、人や地域とのつながりを求めたり、社会貢献・地域貢献のニーズの高まりが見られます。国内では、こうしたニーズに応える観光レジャーが求められています。一方、「ワールドスポーツ」のイベントの誘致は、直接的な「インバウンド」や「MISE」の経済効果だけでなく、間接的に日本の魅力を世界に知ってもらうPRの機会、効果があります。世界のツーリズムの10%はスポーツツーリズムとする調査もあります。
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